イジメテミタイ本文サンプル2
空より蒼き瑠璃色の


「ずいぶん熱烈なキスだな」

 焦点が合わないほど近くにある男の顔はわからなかったが、声には確実に熱さがあった。
 ぼんやりした御剣の口元にこぼれる唾液を、無骨な指が拭い取る。

「涎垂らして寝るかわりに舌入れられるとは思わなかったぜ」

「…かっ……!!」

 ようやく自分の状況に気が付いた御剣が、何をしたのかを理解すると同時に、
 ざらついた顎が寄せられて、再度唇を塞がれる。

 抵抗しなければ、そう思うのも一瞬で、半分は力の抜けた体に、
 もう一度力を取り戻すことが出来なかった。
 三十日あまりの間、人の肌に飢えていた御剣に、
 意識のある状態で受けるくちづけは、あまりに刺激的だったので。

「…ふっ」

 息を継ぐ合間にも追いつかれて上唇を甘噛みされる。
 離れようと首を振ろうとしても、追いかけてくる舌とうなじを探る指先に気をとられて、
 気が付けば一層深く、唇を吸われていた。

 成歩堂とは違う――しかしそれ以上に官能的なくちづけ。

 腰が痺れて、ぼうっとしてしまうような心地良さ―――
 ほろ苦いコーヒーの味が舌に広がってくる。



 どのくらい時間がたったのかわからない。



 気が付くと唇はとうに解放されていて、
 御剣はすがりつくようにして神乃木のシャツの袖を掴んでいた。
 慌てて手を離すが、体はしっかりと男の腕に抱え込まれたままだ。

「…離してくれないか」

「ん……? あんなに熱いキスしてくれたのに、つれないねぇ」

「あ、あれは…!」

「いきなり抱きつかれたのには、ちょっと驚いたぜ」











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