「失礼する」 挨拶と同時に入ってきたのは御剣怜侍だった。 驚く成歩堂の上を、するりと視線が通り過ぎ、御剣は背後に目をやる。 「御剣検事、こんにちは! 今日はどうもありがとうございます」 「いや、真宵くんの頼みとあらば引き受けないわけにはいくまい」 「ありがとうございます! で、これがそうなんですけど、いかがですか?」 「ム」 ………話が全然見えないんだけど。 成歩堂を置いてきぼりにして、真宵は御剣の手を引いて、ぐるりと回りこんでソファに座らせた。 御剣は目の前に並んだジャムの瓶を見て、すぐにさりげない世辞を真宵に告げた。 ここまではまるでよく出来た一連の芝居のようにも見える。 というか、真宵が御剣の手を握っているのが、微妙に成歩堂の癇に障る。 「あー、…御剣も頭数に入ってるんだ」 「モチロン! 御剣検事はどれがいいですか? 好きなの持っていってくださいね。一人三個!」 「そうか。…ウム」 御剣はすぐさま熟考に入った。 目の前に並んだ瓶を眺めて、眉間にしわを寄せて、顎に手を当てて悩んでいる。 「真宵ちゃん、御剣に電話したの?」 「ああ、うん。そうしたらちょうどこっちに来る用事があるからって、寄ってくれるって。 こんなにあるの、二人じゃ片付かないでしょ?」 「僕より先に御剣に連絡したんだ…」 「何言ってるの? ささ、成歩堂くんは御剣検事の後で選んでね」 ボクは御剣より後なのかよ! 成歩堂の激しいツッコミは心の中で繰り広げられただけだった。 大抵成歩堂のツッコミは、成歩堂の心の中だけで繰り広げられることになる。 御剣は真宵にいろいろ聞きながら、瓶を手にとりあれこれ考えていた。 御剣が真宵に聞く内容は成歩堂にはさっぱり意味がわからず、ちんぷんかんぷんな用語が繰り広げられている。真宵は適当に答えているようで、しかし御剣がツッこまないということは、それでいいのだろう。 二人で親密な話をしているのを、脇で意味もわからず待っているのは、トノサマンのことで慣れているのに、なんだか少し悔しい気がする。 「では私はこれにしよう」 御剣はそういって三つ選んだ瓶を机に並べた。 「これとこれですか! じゃ、袋に入れますね」 「開けるのが楽しみだな」 「もらってもらえて嬉しいです!」 真宵ちゃんはそういいながら三つの瓶を綺麗な袋に入れて封をする。 御剣はそれを受け取ってすぐにバッグにしまいこんだ。 でもそれ何にするんだろう? |
御剣はやたらと甘いものを食べている本です(笑)何故か。 |
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