この画像作ってから一部追加したので、実際は少し何かが増えてます。 |
本文サンプル(一部抜粋です) |
「おじゃましまーす」 御剣のマンションのドアを開けて中に入るのは久しぶりで、 たぶん半月以上は前のことになるのではなかろうか、と成歩堂は思った。 相変わらず部屋の中はキレイに片付いていて、 それでも今は初めて招かれたときのモデルルームのような殺風景さは消えている。 玄関のチェーンはかかっていなかったが、普通ならよほどのことがない限り、 必ず玄関まで出迎えにくるはずの御剣が出てこない。 成歩堂は彼から貰った合鍵で中に入ってきたのだが、 それでも在宅なのは間違いない――本人から電話を貰ったのだから。 「風邪でもひいたのかなぁ……?」 切羽詰った掠れた声で、「仕事が終わってからでも構わないので、家に来てほしい――」と、 そう電話が来たのは午後の日が翳り始めた頃だった。 もう冬になろうかと思われる今の時期、すでに当たりは真っ暗だ。 成歩堂は足音を忍ばせて綺麗に掃除された廊下を進む。 「みつるぎ――? 入るよ――」 しかし人の気配がしないというのはどういうことだろう。 暗がりを手探りで歩いても、ものがそれほどおいていない御剣の部屋の中で、 成歩堂が何かにぶつかったり壊したりすることはほとんどないだろうと思われたが、 念のため、電気をつけながら部屋を移動する。 どうやら寝室にいるらしい……やはり具合が悪いのかと思いながら成歩堂はドアノブに手をかけた。 「御剣――?」 部屋の中は暗いが、確かに人の気配があった。 だいぶ暗さに目が慣れてきたが、足元がおぼつかないので、 電気をつけようと壁のスイッチに手を伸ばす。 「つけるな」 「御剣? ――いたの?」 暗がりの中から声がした。 うっそりとベッドの上で何かが動く気配がある。 どうやら御剣がそこにいたらしい…ということに成歩堂は気がついて、 スイッチを探っていた手を下ろした。声を頼りにそちらへ向かう。 「どうしたの、寝ているの? ……具合でも悪いの? 声がなんかおかしいよ」 「――」 御剣は答えずに長く息を吐いた。 息を飲んで、吐いて、そうしてまた声を出そうとして、果たせないらしい。 そっとベッドの上に膝をついて、慎重に距離を計り、成歩堂は御剣に近づいた。 呼吸が近い――このあたりが顔ではないかと思って手を伸ばした。 御剣のシャツに触れた。たぶん肩のあたり。 そのまま身を寄せて、顔のあたりを探る。 「成歩堂…」 抱き寄せようとしたら拒まれた。 「どうしたの?」 なるべく声を荒げずに聞く。自分を呼び出したということは、 一人で解決できないなにかがあったということだ。 黙ってで全部かかえこんで、 どうにかなるまで独りでなんでもしようとかしているわけじゃない ――それはずいぶんな進歩だろう。 あまり問い詰めるような口調にならないように気をつける。 「どうしたの――風邪でもひいた? 声が枯れているけど。今日はどうかした? 用事があって検事局に行ったら、御剣検事は半休とって帰ったって聞いたんだけど」 「…話が早いな」 「僕の顔見ると検事局の人、みんなキミの話するんだから…しょうがないじゃないか」 「う、ム――」 「どうしたの? 寒い?」 成歩堂はそう言いながら御剣の、腕から肩へ手を伸ばした。 なんだか今日はやけに体が熱い――やっぱり熱でもあるのだろうか? (中略) 「い、いや、別に――そ、それで?」 「先が聞きたいか、成歩堂?」 御剣の体が近づいてきた。 熱い――なんだかやけに御剣の体が熱い。 遮光カーテンの引かれた部屋の中は本当に暗く、 隙間から漏れる明かりで御剣の体の輪郭すらわからない。 手探りで御剣を探す―― シャツの布地を越えて背中を抱き寄せようとして――そして。 むにゅ。 「な……!?」 ありえない感触が指先にあった。 あわてて成歩堂は手を引っ込める――御剣が固まる気配があった。 「え……??」 ごくりと唾を飲み込んだ音が、やけに大きく室内に響く。 成歩堂は自分の指先に感じた感触を確かめようと手を引き寄せたが、 しかしそれは御剣の指でがっしりと掴まれて固定されていた。 「な、なに…それ…」 ようやくそれだけ口にすると、御剣が居住まいを正す気配がある。 むやみに暗闇で高まる緊張感。 成歩堂が口を開こうとした途端、今度は御剣が手を引いた。 それが押し付けられた先は――。 「ええええええええ!! !! !? ??」 久しく感じていない、その柔らかい、むっちりとした肌触り ――シャツの布地の下に感じる重量感。 体の皮膚と、その奥にある脂肪の感触 ――手の位置からして、それはどう考えても、御剣の胸の位置だった。 だがそんな、ありえない! 成歩堂の指は、そこで御剣の胸を、 手のひらでそっと掴んでいたのだから。 |
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