きみとみる夏の光・本文サンプル
本文サンプル(一部抜粋です)
キミと見る夏の光

「一緒に見に行かない?」

そんなことを言われたのは
初めてだったので、
私はひどく間の抜けた声で
「なにを?」と問いかけたつもりだった。

つもりだった。
そうだった――たぶん。

あまりに叫びすぎて、喘ぎすぎて、
私はすでに声がかすれていたので、
それが男に届いたのかどうかはわからない。

だが男はそれを聞いて「花火だよ」とだけ答えた。

花火?

何故そんなものを見に行く必要があるのだ――と思いかけて、体が浮く。熱が背筋を焼く。

花火?

私にはそれに付随する連想が続かない。

花火?

それは何だ、
火薬と紙で寄り合わされた爆発物、
色の違いは薬品の配合の差異、
青の色を出す薬品はなんだったか、
確か―――。

ああ、視界がぶれる。

男は笑いながら
私の膝を胸に押し付ける、
苦しいからこの姿勢は
嫌だと何度言えば――ああ、
視界の隅でぶらぶら
揺れているのは私の足首か?

ぐっと腰を進められる。
背中が浮く。
苦しいが相手を顔を見ることができる
この体位が君は好きなのだな、
いつもこちら側で私を侵す時の君は元気がいい
――私はそれを彼の表情でなく、
体内で暴れる肉体の一部で感じる。
それは私の感じるところを探し、
もっとも深く繋がった状態で、
ほんの少しだけ奥へ
腰を突き入れたときに一層強く思う。
いや、感じる――意識が吹っ飛ぶような感覚、
目の奥が痺れる、見えなくなる――目を閉じる。

後はただ、白く塗りつぶされる世界だけがある。
私はそれを君によって、
そう君によってもたらされることが
気持ちがいいと感じる。
君が私の体の中を知り、
私の体のスイッチを知り、
そうして私の欲望を引きずり出すのを
好ましいと感じる――
それを自分の体の中で感じるのは、
悪くない。

悪くない、と思う。





「何をするつもりなのだ?」

男の生理は吐き出したらおしまい、
後はすぐに冷静になる。
それは生物としての反応で、
つまり生殖が終われば
男には用がないからだとも言える。
自分の身の危険は
そこからもう始まっている。
だから醒める。

はず、だ―――…たぶん。

だが私の感じている快楽は
それとは少し違う、
もっと深くてもっと長い。
それを成歩堂に
知れとは思わない、
だが無視されるのは業腹だ。


私は動けない、動かせない
――私の感じていた快楽は
男とは違う種類のものだ。
脳髄が痺れていて、
指先が震えている。
足の間が数ミリほど
ずれているような奇妙な感覚。

それももう慣れた。

体の、しかも腰のあたりの感覚が
戻らないのはいつものことだが、
声だけははっきり出すことが出来た。
先ほどの質問より酷い声だ。

「何をって?」
「だからキミがさっきそう言った」
「だからそのままの意味だけど」
「どういう意味だ?」
「意味って、そりゃ夏だからだろう」

意味がわからない。

ようやく男は私の質問の意味に
気がついたようで、
矢継ぎ早にいろいろ質問してきたのだが、
やはり私には少し
意味がわからないところが多すぎた。

質問の答えの意味もわからずに
ああ、うん、そうだ、しらない、
いかない、しらない、なぜだ――と返せば、
男は大袈裟に嘆いて私の肩を掴んだ。
面倒だが身を返すと、
男は至近距離から私に謎の宣言をした。

「御剣! 月末の土日、まるまる全部開けといて!」


それは強制であり、命令だ。
 


私に命令するとは、いい度胸だな、成歩堂龍一。















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