本文サンプル(一部抜粋です) |
コタツとはなんという悪魔の機械なのだろう! 御剣怜侍は二十五歳にして、初めてその魔力をその身に感じた。 幼少時には自宅に確かにコタツがあったはずだったが、 その当時はそれほど魅力的な道具だったのだろうか? …などということを思い出したのは、ずいぶん後になってからだった。 御剣の目の前には、真っ赤な顔をして床に寝転がった成歩堂がいた。 自分の前にもごろごろと転がっている酒の瓶が見えた。 視界が妙にぼんやりとしている。 酒瓶の数を数えようとしたのだが、 それも途中で面倒になってきて止めてしまった。 それもこれも皆、この体を温めてくれる、 魔物のような機械のせいだ。 そうだ。 そうに違いない。 御剣怜侍は至極面倒臭そうに、 目の前に転がっている酒の瓶を手探りでさぐり、 ようやく中身がまだ入っているビールを探し出した。 揺らすとたぷたぷ音がする。 それを開いているコップにあけると、 すでに炭酸はかなり抜けていた。それに生ぬるい。 出来れば燗をつけた日本酒が欲しかったが、 立ち上がって暖めることを考えただけで、面倒くさくて仕方がない。 せっかくだからと買って持ってきたワインは、 早々に二人してかぱかぱ飲んであけてしまったし、 台所にあるはずのウイスキーを 今更持ってくるというのも面倒で仕方ない。 なんでさっきから酒のことばかり考えているのだろう ということにも御剣は気がつかず、 ぬるいビールを流し込みながら、 だらだらと他にあるはずの酒のことを考えていた。 温いビールなど普通なら飲まずに捨ててしまうようなところだが、 今は別にそんなことはどうでもいい気分だ。 こうやって、寝転がっている成歩堂を見ているのは、 なんだかとても楽しい。 |
ブラウザバックでお戻りください。 |